チョコレートの風味を支える「砂糖」のこと

レポート

チョコレートの風味を考える際にはカカオ豆の産地などが注目されますが、砂糖や粉乳といったカカオ以外の原料も風味に影響を与える大切な要因です。

今回はそんな副原料のひとつである「砂糖」に焦点を当ててご紹介します。

チョコレート中の砂糖の状態

チョコレートに使用される砂糖や粉乳といった副原料は水溶性ですが、脂溶性ではありません。
そしてチョコレートにはほぼ水分が含まれていないため、油脂(ココアバター)の中に、砂糖や粉乳、カカオマスなどの粒子が分散した状態になっています(ちなみに食べた時にこれらの粒子のざらつきを感じないよう、製造時に30μm以下まで細かくします)。

溶けずに存在しているため、砂糖や粉乳などの風味が保持されやすく、また特性が保たれたままになっています。
つまり、水が付着すると砂糖が溶けだしたり(シュガーブルームの原因)、熱によって焦げたり乳夕ンパク質が凝固したりするのです。
このためチョコレートはカカオ原料だけではなく、副原料の扱い方も総合的に考える必要があります。
これが副原料の風味が重要で、チョコレートの扱いが難しい理由でもあるのです。

チョコレートに使われる糖

砂糖には様々な種類がありますが、菓子業界で代表的なのはグラニュー糖ではないでしょうか。
チョコレートにもグラニュー糖を用いることが一般的ですが、砂糖はグラニュー糖の他にも、精製の回数や結晶化の順序により多くの種類があり、それによって特有の風味を持っていたり、甘味の強さが違ったりします。
こうした違いがチョコレートの風味を特徴づける要因となるのです。
砂糖の代表的な原料はサトウキビとサトウダイコンです。

【サトウキビ(甘蔗)】
トウモロコシに似たイネ科の多年草で高さは3~6m。節と節の間に多量のショ糖を含んでいます。平均気温20度以上のブラジル、インド、中国などで育ち、日本では九州以南で多く栽培されています。

【サトウダイコン(甜菜・ビート)】
形が大根に似たアカザ科の植物。直径10~15cmの根の部分にショ糖を含んでいます。栽培には冷京な地域が適しており、ヨーロッパ、ロシア、北アメリカ、日本では北海道で栽培されています。

チョコレートに使われる代表的な糖の製法と特徴

●グラニュー糖
サトウキビやサトウダイコンから絞った糖液を濃縮、不純物の除去を繰り返し乾燥させると、「精製糖」になります。そのひとつがグラニュー糖です。この後、粉砂糖やパールシュガーに加工することができます。グラニュー糖は安定性が高く、癖がないのが特徴です。

● 黒砂糖
サトウキビの絞り汁を煮詰めて作った黒褐色の砂糖で、沖縄や鹿児島の南西諸島で製造されます。糖度は85度程度ですが、特有の風味により甘みを強く感じられます。一般的にチョコレートに黒砂糖を使用すると、黒糖の複雑な甘みや奥深いコクを付与することができます。

●和三盆糖
ショ糖の結晶と糖蜜を少量の水を加えて手で力強く練り上げる作業(研ぎ)と、麻袋に入れて糖液を搾り取る作業を繰り返して作られます。極めて微細で滑らかな状態になるため、口当たりが大変よくなります。徳島県や香川県で江戸時代から伝統的に作られ、和菓子の素材として古くから珍重されてきました。一般的に和三盆で甘みを付けたチョコレートはまろやかで独特な風味とくちどけの良さが付与されます。しかし、黒砂糖や和三盆糖はグラニュー糖に比べ生産量が多くないため、業務用チョコレートに使用することは一般的ではありません。特に和三盆糖は製造工程が複雑であるため大量生産が難しく希少価値が高いことで知られています。

砂糖代替として注目される「糖アルコール」

砂糖は馴染みのある甘さを持っている魅力的な食品ですが、太りやすい、虫歯になりやすいといったイメージがあります。最近ではそんな砂糖の代わりに糖アルコールを使用した商品も増えています。
糖アルコールは糖類(グラニュー糖の主成分であるショ糖など)の還元基をアルコール基を含む構造に変えることで作られ、以下の特徴があります。

・カラメル化しにくく、必要以上の焦げ色が付かない
・虫歯の原因菌に利用されることがない(非う蝕性)
・人間の小腸で消化されにくい(吸収されるカロリーが少ない)


そのため、ダイエット飲料や虫歯になりにくいお菓子、あまり焼き色を付けたくないお菓子、清涼感のあるキャンディやもちろんチョコレートにも様々な分野で利用されています。また、この消化吸収されにくいという特性から、過剰摂取により一時的におなかが緩くなる場合もあります(個人差があります)。

大東カカオの砂糖ゼロ、糖類ゼロのスイートチョコレート
「ZERO」

「ZERO」は糖アルコールの1種である「マルチトール」を使用して甘みを付けています。
マルチトールはグラニュー糖に近い甘味を持っていることが特徴で、食品添加物ではなく食品として扱われます。

まとめ

チョコレートの風味はカカオ豆だけでなく、砂糖をはじめとする副原料の種類や
扱い方によっても大きく変わります。
定番のグラニュー糖だけでなく、黒砂糖や和三盆、さらに糖アルコールといった
多様な甘味料がチョコレートの世界を広げているのです。

次にチョコレートを味わうときは、ぜひ「砂糖」にも注目してみてください。

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